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車の豆知識その21

 現代の車と過去の車の重さ(´ω`)

最近のクルマはどんどん重くなってきています。
軽自動車でさえ、車両重量が1tにもなるような車種が少なくありません。
こうなると、はたして「軽」と呼んでもいいのかと思いたくなる重量級ぶりです。
たとえば、1970年代~1980年代に若者を中心に人気のあった、トヨタのセリカやカリーナといった排気量が1600ccクラスのクルマの車両重量が、まさに1t程度でした。
排気量がわずか660ccの軽自動車が、かつての1600ccクラスのクルマと同じ重さになってしまったのです。
いったいなぜ、最近のクルマはこうも重くなってしまったのでしょうか?
また、車重が重くなっているにもかかわらず、現在のクルマは当時のクルマにくらべて速く走れて燃費もよくなっているのはなぜなのでしょうか?

 昔のクルマは驚くほど軽かった~バイクなみの重さ360gの車

1958年に富士重工業から発売されたスバル360という軽自動車があります。
俗に「てんとう虫」と呼ばれるかわいらしいクルマです。
実は、このクルマの車両重量が、なんと385kgだったのです。

ちなみに、代表的な大型バイクであるハーレーダビッドソンのウルトラリミテッドローというモデルの重量は、415kgもあります。
つまり、スバル360は4輪車あるにもかかわらず、バイクよりも軽かったのです。
当時の軽自動車はタイヤが側溝に落ちてしまっても、2人で「よいしょ!」と声をかけて持ち上げれば簡単に脱出できました。
また、方向転換が難しい狭い路地でも、バンパーに手をかけて「よいしょ!よいしょ!」と持ち上げながら少しずつ方向転換することも可能でした。
笑い話のようですが、本当にそれくらい当時の軽自動車は軽かったのです。

 他の軽自動車も軒並み500kg以下の軽量級でした

スバル360の385kgという軽さは驚きですが、それ以外の軽自動車も当時は500kg以下の車重が普通でした。
たとえば、1967年にホンダから発売された、N360というクルマの車両重量は475kgです。
このクルマは、現在ホンダから販売されているN-ONEのモチーフになったクルマですが、N-ONEの車重は軽量のノンターボモデルでも830kgもあります。
ホンダのN360と同じ年にスズキから発売された軽自動車に2代目フロンテがありますが、こちらの車両重量もわずか425kgでした。
ちなみに、フロンテの後継車種であるアルトは、重量化が進む現代のクルマの中で軽量化を進めている稀有なクルマとなっています。
1t近い重さがある軽自動車が多くなっている中で、スズキアルトの最軽量モデルであるLグレードはわずか610kgしかありません。

ホンダN360や2代目スズキフロンテが売られていた時代の軽自動車の排気量は360ccでしたが、現在の軽自動車の排気量は660ccです。
また、ボディのサイズも当時は全長3m以下、全幅1.3m以下、全高2m以下に制限されていたのに対して、現在は全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2m以下と、だいぶ大型化しています。
そんな大型化をしている現在の軽自動車のなかで、スズキアルトは610kgという軽量化を実現しているのですから驚きです。
現在の軽自動車の売れ筋となっている背の高いミニバンタイプのモデルの多くは1t近い重量級です。
ダイハツタントの場合、一番軽いモデルで920kgありますし、ホンダのN-BOXも軽いモデルで930kgあります。
排気量が660ccになっているとはいえ、これだけの重量があると、非力なノンターボモデルでは高速道路120km/h時代に対応していくのは厳しいかも知れません。

 1200ccクラスのコンパクトカーも今の軽自動車よりも軽かった?

車重がどんどん重くなっているのは軽自動車ばかりではありません。
1200ccクラスのコンパクトカーであっても事情は同じです。
1972年にホンダから発売された初代シビックのハッチバックは、排気量が1200ccもあるにもかかわらず、その重さはわずかに600kgでした。
これは、現在のアルト最軽量モデルよりも軽いことになります。
1981年にホンダから発売された初代シティも排気量は1200ccですが、車両重量はわずかに655kgでした。
これも、現在の多くの軽自動車よりも軽い重量ということがいえます。
シティはキュートな外観とは裏腹に俊足なモデルでしたが、現在の多くの軽自動車よりも軽いボディに1200ccのエンジンが搭載されていたのですから速いのはあたり前です。
最近の1200cc~1300ccクラスのコンパクトカーを見てみますと、日産マーチの一番軽いモデルで940kgとなっています。
ホンダフィットの最軽量モデルが970kg、同様にマツダデミオが1010kg、トヨタのヴィッツが970kgとなっています。
現在の多くのコンパクトカーは1t前後の車重があり、初代シビックや初代シティとくらべて、5割以上重くなっていることになります。

 2000ccクラスでも現在のコンパクトカーなみの軽さ

2000ccクラスのクルマはどうでしょうか?
1968年に発売を開始され、ハコスカの愛称で親しまれたスカイライン4ドアセダンの車両重量はわずか1090kgでした。
2000ccの4ドアセダンなのに、現在の軽自動車やコンパクトカーよりも、ほんの少し重い程度の車重しかありませんでした。
ハコスカのGT-R(ツードアハードトップ)でも車重は1100kgでした。
この1100kgという軽量ボディにR380というレーシングカーのエンジン(S20型)をデチューンして搭載していたのですから、GT-Rが当時のクルマとしては圧倒的な速さを誇ったのも当然です。
ちなみに、現在発売されている日産GT-Rの車両重量は1,740kgもあり、スポーツカーとしてはかなりのヘビー級となっています。
しかし、現在のGT-Rはさまざまな路面状況でのグリップ力をあげるために、緻密な計算のもとにあえてその重量になるように設計されています。
レーシングカーであれば、大きなウイングで強力なダウンフォースを得ることができますが、市販車であるGT-Rで同じことをすることは無理なので、あえて車重を重くしてグリップ力をあげているのでしょう。
スポーツカーといっても、「単純に軽ければいいということではない」という考え方に変わってきているわけです。
1970年代に起こったスーパーカーブームの立役者となったランボルギーニ・カウンタックLP400は、エンジンの排気量が4000ccもあるのに、車重はわずかに1065kgでした。
マツダデミオの現行車の車重が1010kgですので、デミオに4000ccのエンジンを積んでしまったようなものです。
この当時は、車体重量が軽ければ軽いほどパワーウエイトレシオ的に有利になるので、速く走れるという考え方が主流だったのでしょう。

 なぜ最近のクルマはこれほど重くなってしまったのか?

最近のクルマがこのように重量級になってしまった背景には、安全性能の向上があります。
衝突安全ボディを採用するにあたって、さまざまな補強により剛性を高めたことで必然的にボディそのものが重くなってしまったわけです。
もちろん、ボディそのものが重くなってしまっただけではなく、1970年代にはなかった、さまざまな安全装備が現在のクルマには標準で搭載されるようになりました。
急ブレーキ時のタイヤのロックを防止するABSや、エアバッグなどは、いまやどのクルマにもあたり前のようについています。
また、走行中時の静粛性能や快適性を高めるために、さまざまな防音材や制振剤などがボディの各所に埋め込まれるようになりました。
さらに、クルマに装備されている各パーツの電動化も、重量増の一因となっています。
たとえば、ウインドウもかつてはハンドルを回して人力で開けていましたが、いまやパワーウインドウがあたり前です。
左右のドアミラーも、かつては窓から手を伸ばして手動で動かしていましたが、いまのクルマはボタン操作で自由自在に動かすことが可能です。
また、高級車になると、シートを倒したりスライドさせたりするのも電動です。
さらに、ミニバンなどでは、スライドドアの電動化も常識になりつつあります。
かつて手動で動かしていたものを電動化することによって、その箇所には必ずモーターが必要になります。
いまの国産車には、大小さまざまなモーターを合わせると、50個~150個ものモーターが使われているといわれています。
快適さを求めるあまり、その代償として車がどんどん重くなっていってしまったわけです。

 重いことによるメリットとデメリットを考えてみる

このように、昔のクルマにくらべてさまざまな理由によって重量級化してしまった現在のクルマですが、その背景にはボディの剛性を高めたり快適装備を充実させたりといったことがあることがお分かりいただけたかと思います。
ただ、車重が重くなるということを、単純にネガティブに考える必要はありません。
なぜなら、車の重量が重くなることには、デメリットだけではなくメリットもあるからです。
ここでは、クルマの重量が重くなることによる、メリットとデメリットについて考えてみたいと思います。



重いことによる動力性能の低下をハイパワー化でカバー!
車重がアップすることによる一番のデメリットとしては、動力性能的に厳しくなるという点があげられます。
もしエンジンの出力が同じだと考えた場合、車重の軽いクルマの方が速く走れるということは容易に想像がつくことでしょう。
エンジンの出力が1970代のままだったら、現在のクルマは相当にドンクサイ車ということになってしまいます。
しかし、現在のクルマの動力性能は当時とはくらべものにならないほどよくなっているのです。
車重の重いミニバンでさえても、最高速度は160km/hほどに達します。

なぜ重量級化が進んでいる現在のクルマが当時のクルマよりも速く走れるかといいますと、重量化を上回る勢いでハイパワー化が進んでいるからです。
たとえば、先ほどのスカイラインの例で見てみますと、ハコスカの2000GTの出力はわずか100馬力でした。
伝説のスポーツカーといわれたハコスカのGT-Rでも160馬力です。
それに対して、現在のスカイライン2000GT-tは、ターボ仕様ということもあり、211馬力となっています。
ちなみに、現在のGT-Rはまったく別物のクルマになっており、最高出力はなんと565馬力もあります。
また、ハコスカの時代の馬力表示はグロスであったために、現在のネット表示に直すと、さらに1割ほど低い数字になるはずです。
このように、ボディの重さをハイパワー化でカバーすることによって、動力性能の低下を補っているわけです。
軽自動車も、スバル360の出力がわずか16馬力だったのに対して、最近の軽自動車は排気量が660ccと大きくなったこともあり、50馬力以上があたり前になっています。
ターボ車の場合にはさらにハイパワー化していますが、規制もあり最大で64馬力となっています。
つまり、スバル360よりも2.5倍も車体が重くなっている現在の軽自動車ですが、出力に関してはターボモデルだと4倍もアップしているのです。

 重くなると燃費が悪くなるはずですが

車重が重くなることによるデメリットは動力性能の低下だけではありません。
軽いものを動かすよりも、重いものを動かす方がたくさんのガソリンを消費することになるというのは、容易に想像ができると思います。
つまり、クルマというのは、本来であれば重くなればなるほど燃費が悪くなるわけです。
しかし、技術の進歩というのは恐ろしいもので、最近の重量級のクルマは、昔の軽量級のクルマにくらべてむしろ燃費がいいのです。
30年ほど前の2000ccクラスのAT車だと、実燃費はせいぜい6km/L~7km/L程度でした。
ところが、最近の2000ccクラスのクルマは、実燃費で普通に10km/L以上は走ってしまいます。
30年前にくらべてはるかに重量級になっているにもかかわらず、燃費はあきらかに向上しているのです。
当時にくらべて、エンジンの燃焼効率が大幅にアップしたことや、キャブレターに変わるコンピューター制御による燃料噴射装置の装備、ATに変わるCVTの登場などが、重くなったクルマの燃費を劇的に向上させているわけです。
本当に技術の進歩には驚かされますね。

 車体が重いことによるメリットもあります

このように、重量増によるデメリットを技術革新によって次々にクリアーしてきた国産車ですが、実は重量が増えることによるメリットも大きいのです。
まず、先ほども書きましたように、ボディの剛性が高まることによって、衝突した際の安全性が高まりますし、高速走行をした場合の安定性も格段に高まります。
同じ高速道路を100km/hで走るにしても、1970年代の軽量級のクルマと現在のクルマを乗りくらべたら、その安定感には雲泥の差があることでしょう。
コーナーリングのときも、剛性の高いクルマは歪が少ないために走りが圧倒的に安定します。
また、剛性不足の1970代のクルマは、長く乗り続けるとボディが全体的に歪んでしまって、ドアの閉まりが悪くなってしまうといこともありました。
さすがに、剛性がアップしている現代のクルマでは、そういったことは起こりません。
乗り心地に関しても、車体が重いクルマの方がよくなります。
剛性が高いクルマは歪が少ないために、路面の凹凸をうまくサスペンションが吸収してくれます。
また、重量が重くなればなるほど、走行中の慣性によって細かな振動がおさえられるために、軽量級のクルマに乗っているときのようなバタバタ感がありません。
重量級の高級車に乗ると、どっしりとした乗り心地の良さを感じるのは、サスペンションの設定などの影響もありますが、車重が重いこともその一因となっているのです。
クルマのボディが重くなることは、決して悪いことばかりではないということが、お分かりいただけたかと思います。

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